愛と変態の一方通行日記

日々見聞きしたことへのちょっとしたコメント。

アーバンギャルド「鬱くしい国」そして全国ツアーへ

あんたこの前チケ発だったのに嵐が過ぎたらライブですってよ…。

久しぶりにアーバンギャルドについて書こうと思います。去年はベスト盤の発売があったぐらいで作品としてはあまりこう書くことがなかったので。正直、2012年にライブに行き過ぎて、去年のベスト盤仕様のセトリは自分にとって新鮮味が薄いだろうと予見はしていたし、実際、新しいこともそうでもないこともあったのでまあそこはブログよりはTwitterでぽちぽち書いたりした程度でいいかなって。



今回のアルバムについて話すには、避けて通れない話題もあって、ここで回れ右、とか思ったけどそれも書かず。たまにはいいじゃん。シワシワババアのつまらない小話くらい。

新しいアルバムは随分雰囲気が変わった。
去年、谷地村啓がバンドを離れたことも大いに関係があるし、*1ユニバーサルから徳間ジャパンへ移籍したことに伴うディレクション体制の変化もあってのことだろうと思う。もし、まだユニバーサルにいたら、もし、谷地村啓がいたら、あるいはインディーズに戻っていたら、そういうifを考えることもある。けれど、ifに対する答えとして出てきた未来が正史になるならば、このアルバムは生まれなかった。すべては偶然であり必然であるとして捉えていくしか納得できる道はなく、またこれまでアーバンギャルドのメンバーとして活動していた人たちがアーバンギャルドに加入して、そして、去っていった、あるいは今日まで活動しているという事実があって、その延長に「鬱くしい国」があることを否定することは出来ない。過去があるから「鬱くしい国」は手元に届いている。誰かの血と涙と、あと何かの上に。*2

今回のアルバムでこれまでのみっしりした音の厚みを少し離れ、浜崎さんのボーカルをよりクリアに、そして松永さんのボーカルを引き寄せて、よりポップさが際立っているというのが最初の印象。それから、打ち込み部分の遊びをはっきり効かせてスパイス成分たっぷり。(時間をかけた、というのはこういう部分なのかな、と思案する。こだわりを感じる。)ファンの間でも意見が割れたのは、前作が出てから時間が経ちすぎていたからというのもあるだろうし、奏者が加わっていることも理由にあるだろう。でも、その一方で最初にテンポの速い持ち上げ曲→メインテーマ→サブテーマ→ポップにそして少々の毒っけ→浜崎さん渾身のバラード(そして祈り)→ライブ用ぶち上げ曲→この曲ライブで出てこなさそうだなっていう*3→フィナーレへっていう流れは実は何も変わってない。何より松永さんの歌詞に出てくる韻踏みや言葉遊びや世界観はテーマこそ変われどコアは同じであることをむしろつきつけられる。オリジナルアルバム前作のガイガーカウンターカルチャー発売以降に経験した事象を2年間の成果として提示してきただけで、何も変わっていない。
とはいえ、今回のアルバムでは時間だけでなく外部の力を借りたことによって、いい意味でメジャーの音楽になった。私はメジャーの音楽が好きだ。なぜなら伝えたい音が明確だから。明確さは退屈さをはらむかもしれないが、浜崎さんの高音域やドラムのリズム、ギターの間奏をきっちり聞かせ、作詞家の役割を松永さんが一手に背負って、大勢の人が少しずつ、あるいはたっぷりと、それぞれが活きるようにバランスを整えて揉みこむ。結果的に「鬱くしい国」が「少女は二度死ぬ」「少女都市計画」「少女の証明」「メンタルヘルズ」「ガイガーカウンターカルチャー」のどれとも違うアルバムであることを決定づけたのはこの明確なサウンドにあると思うし、何より、音のバランスが好みなので私は今までのアルバムと同じように、このアルバムも楽しんで聴いている。特に好きなのはワンピース心中・君にハラキリ・ロリィタ服と機関銃・アガペーソング・ガールズコレクション・戦争を知りたい子どもたち。鍵山さんの楽曲はリミックスも含めて自分の趣味から外れない。今回もしびれました。そして何より、やっとドラムが目立つ曲が出てきたのでちょっとほっとした部分もある。(自分でやってるんだからそこは主張しないと!というのはおせっかいだろうか)瀬々さんは一貫して自分の世界観を持つタイプだと思っていたけれど今回新しい面を見せたなと感じる。出し惜しみしないで欲しい。松永さんはまた今回も最後の曲でストレート投げてきたなあと思いつつ、強情に変えてこなかった歌唱スタイルを曲げてきたことに驚きを感じる。表現の手法は多い方がいい。そして浜崎さん。かつてウィスパーボイス時代が信じられないほど力強くそして冴え渡っているし、バラードとアップテンポの曲の使い分け方の中に浜崎さんの色をキチンと残していくところもまた一興。より生き生きとした声であるのも良い。というかすみません、今回のアルバムの浜崎さんは今まで以上に絶賛しかありません。反省できません。これは断酒もんです。(って言って飲むんだけど)


ここまで散々好き勝手書き散らしてきたけれど、最後に。少し昔話を。


「日本は病気。ツアー」の最終公演の地、震災から一年、復興の槌音もまだ遠くにかすかに聞こえるかどうか、冬の気配と悲しみが残る仙台で「この曲は本当はやるつもりはなかった。この曲を仙台で歌えると到底思えなかった。けれど、東北のファンの方からぜひ演奏してほしい、仙台で歌ってほしいと言われたので、歌うことにしました」と言って演奏した、「あした地震がおこったら」を今でも忘れることが出来ない。今となっては二度と聞けないあの日の歌は、今まで聞いたどのアーバンギャルドの演奏よりも慈愛に満ちて、ひんやりとした悲しみにそっと寄り添う歌だった。

あの日に戻ることはもう二度とかなわないけれど、また、新しい旅が始まることにほんの少しの切なさと期待を込めて、また全国の地でたくさんの人たちを楽しませ、そしてちょっと突き放したり救ったりして、どうかこれまでともこの先とも違う、「鬱くしい国」だけでしかできない全国ツアー公演を病気や事故なくやり切れますように、どうか悔いなく満足いく成果が出ますように、と願わずにはいられない。私は過去のアーバンギャルドからたくさんのものをもらった。だから未来のアーバンギャルドに少しでもいいご縁がありますように、無事に帰ってこられますように。東京より愛を込めて、締めたい。

*1:件の話は事実の線が強いという論調で片付いるが、正直、事務所側でそれを理由に離脱させたとは言いがたい。結果としてそう見えるからしかたないことではあるが、仮に本当のことだとしても、巧妙かつ壮大な蹴落とし作戦ではなく真実である、ということを明示できる判断材料の出典が確かでないので言及は避けさせて欲しい。ただ、互いに目指すものが違って歩み寄ることが出来ない理由がほかにあったのだろうとふと思うことがあって、これが決定打となっただけで、脱退は時間の問題だったのでは、とも時に思ったりもする。それならばもはや仕方ないのか。否。いずれにせよ無念ばかりが残る。

*2:まあ、よそのバンドとか見てると再結成とか皆平気でボコボコやってるからそのうち戻ってくるんじゃないかなとたまに思うことはある。

*3:好きな曲は結構多いので切実にこの辺をライブでやってほしい